MARKET NOTE 005
POPUPは、売場を試しながらブランドを育てる
大丸「明日見世」から考える、マーケティングとしてのPOPUP
ECやSNSをきっかけに成長するブランドが増えています。
オンラインストアで商品が売れた。
SNSで多くの人に知られるようになった。
口コミが広がり、ブランドのファンも増えてきた。
その次に多くのブランドが考えるのが、
「実際の商品を体験してもらえる場所を、どうつくるか」
という課題です。
オンラインでは、写真や動画で商品の魅力を伝えられます。
一方で、商品の大きさ、重さ、質感、香り、味、使い心地まで、画面だけで伝えることは簡単ではありません。
そこで、リアルな顧客接点として活用されているのがPOPUPです。
以前の記事では、ロンドンで広がるPOPUPの取り組みをご紹介しました。
今回は、日本国内で、POPUPを単なる期間限定販売ではなく、ブランド支援や顧客理解へつなげている事例を見ていきます。
大丸「明日見世」は、場所を貸すだけの売場ではない
大丸東京店の「明日見世」は、大丸松坂屋百貨店が運営する複合型体験ストアです。
EC・D2Cブランドなどを中心に、大丸東京店で12週間、商品を展示・販売できます。
ただし、その特徴は、単に百貨店のスペースを借りられることではありません。
百貨店スタッフによる接客。
商品の魅力を伝える売場づくり。
館内やオンラインでの紹介。
顧客の声の収集。
出品結果のレポート。
今後に向けた提案。
百貨店の売場と接客ノウハウを使い、オンラインだけでは伝わりにくい商品の価値を顧客へ届ける仕組みになっています。
公式サイトでも、認知から体験、販路拡大までを支援する「リアルチャネル展開支援サービス」と説明されています。

売上だけでなく、次の判断材料を持ち帰る
POPUPを開催すると、当然ながら売上が発生します。
しかし、マーケティングの視点で見ると、売上以外にも多くの情報が残ります。
どのような人が立ち止まったのか。
最初に手に取られた商品は何だったのか。
どの価格で迷われたのか。
商品について、どのような質問が多かったのか。
説明を聞いた後、購入へ進んだのか。
パッケージや商品名だけで用途が伝わったのか。
SNSで人気の商品と、実際の売場で売れた商品は同じだったのか。
こうした顧客の反応は、次の商品開発や価格設定、売場づくり、接客、Webサイトの改善材料になります。
大切なのは、
「一週間でいくら売れたか」
だけを残すことではありません。
この地域で、この商品構成を展開し、このような顧客から、このような反応があった。
そこまで記録できると、POPUPは次の出店や販路を考えるための実績になります。

国内でも、リアルとオンラインをつなぐ取り組みがある
「明日見世」以外にも、リアルな売場を商品の検証や販路開拓に活用する取り組みがあります。
パルコが展開した「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」では、クラウドファンディングとリアルな展示を組み合わせ、実証段階の商品を顧客に見てもらう仕組みが設けられました。
展示商品に対する顧客の行動データや、店舗スタッフとの会話から得られた情報を出展者へフィードバックし、商品の改善、新商品の開発、次の流通戦略へ活用することが目指されていました。
また、丸井グループも、D2Cブランドなどのリアル店舗への出店や運営を支援しています。
マルイ・モディの短期出店スペースや、店舗スタッフによる販売・運営支援など、オンラインを中心に事業を展開するブランドがリアルへ挑戦しやすくする仕組みを提供しています。
仕組みや対象となるブランドは、それぞれ異なります。
それでも共通しているのは、
リアルな売場を、商品を販売するだけの場所ではなく、顧客と接し、反応を確かめ、次の成長へつなげる場所として使っていることです。
最初から大きな売場だけを目指す必要はない
百貨店には、大きな強みがあります。
百貨店そのものへの信用。
目的意識を持って買い物へ来る顧客。
高付加価値の商品を提案しやすい環境。
丁寧な接客。
ギフト需要。
オンラインブランドにとっても、百貨店で商品を紹介できることには大きな価値があります。
一方で、百貨店の売場であれば、どのブランドでも希望すれば出品できるわけではありません。
商品の特徴やブランドの目的、想定される顧客との相性などを踏まえて、出品や展開について相談・判断されます。
また、一般的な百貨店催事やPOPUPでは、商品そのものの魅力だけでなく、売上見込み、過去の販売実績、商品供給や売場運営の体制などが判断材料になる場合があります。
だからといって、最初から百貨店だけを目指す必要はありません。
駅ナカ。
地下街。
ショッピングセンター。
地域の商業施設。
イベントスペース。
ブランドや商品に合った売場は一つではありません。
まずは異なる場所で商品を販売し、実際の反応を確かめる。
結果を分析し、商品構成や価格、売り方を改善する。
そのうえで、次の売場を選ぶ。
この積み重ねが重要です。
百貨店が、すべてのブランドのゴールではない
POPUPを重ねて実績をつくるというと、
「駅ナカから始め、最後は百貨店へ進む」
という階段を想像するかもしれません。
しかし、百貨店がすべてのブランドにとって最適な売場とは限りません。
商品によっては、駅ナカの方が短時間で購入されやすい場合があります。
地下街で定期的に販売した方が、顧客との接触回数を増やせる場合もあります。
郊外のショッピングセンターの方が、家族客や地域の顧客と相性が良いこともあります。
POPUPで商品を知ってもらい、その後の購入はオンラインストアへつなぐ方が効率的なブランドもあります。
重要なのは、売場に序列をつけることではありません。
ブランドの成長段階や、商品の特徴、出店の目的に合わせて、最適な売場を選ぶことです。
百貨店への出品は、選択肢の一つです。
駅ナカや地下街、商業施設で継続することも、同じように一つの戦略です。

POPUPの実績は、数字と経験の両方で残す
POPUPを次へつなげるためには、出店した事実だけでは十分ではありません。
売上はいくらだったのか。
どの商品が売れたのか。
どの地域で反応が良かったのか。
どの顧客層が購入したのか。
どのような質問を受けたのか。
商品や売場を、どのように改善したのか。
販売員や在庫を含め、問題なく運営できたのか。
こうした結果を残しておけば、次の出店候補先へ、自社ブランドの特徴を具体的に説明できます。
「明日見世」の公式事例では、アイデア家電メーカーのTHANKOが、出品によって得られた顧客の反応を商品戦略の材料として活用しています。
さらに、大丸東京店での出品実績が信頼性の向上につながり、販路拡大を進めるうえでの営業材料になったと紹介されています。
POPUPの実績とは、売上金額だけではありません。
顧客を理解したこと。
改善を行ったこと。
売場を運営したこと。
次の出店でも再現できる方法を持ったこと。
それらを含めて、ブランドの実績になります。
場所を変えながら、売上とブランド価値を高める
一つの売場で成果が出なかったからといって、その商品に市場がないとは限りません。
売場の顧客層が合っていなかった可能性があります。
商品の価値を説明する時間が足りなかったのかもしれません。
価格や商品構成、見せ方に改善の余地があった可能性もあります。
反対に、一つの売場で売れたからといって、別の地域でも同じように売れるとは限りません。
だからこそ、複数の場所で試す意味があります。
場所を変える。
時期を変える。
商品構成を変える。
見せ方を変える。
結果を記録し、次の出店へ反映する。
POPUPを繰り返す目的は、単に出店回数を増やすことではありません。
ブランドに合う顧客と売場を見つけ、売上とブランド価値を高める方法を探すことです。
POPUPは、次の売場を決めるための実績になる
大丸東京店「明日見世」は、POPUPが単なる期間限定販売ではなく、ブランド支援や顧客理解、販路拡大へつながる可能性を示す国内事例です。
パルコや丸井グループの取り組みからも、リアルな売場を、オンラインブランドやメーカーの成長支援へ活用する考え方を見ることができます。
ただし、どのブランドも同じ売場を目指す必要はありません。
大切なのは、
まず出店する。
顧客の反応を見る。
結果を分析する。
商品や売り方を改善する。
次に試す売場を選ぶ。
この流れを続けることです。
POPUPは、一度きりの販売イベントではありません。
一つの出店で得た数字と経験を、次の判断に使う。
その積み重ねが、ブランドに合った販路を見つけ、次の売場へ進むための実績になります。
出典・参考資料
- 大丸松坂屋百貨店「明日見世」出品ブランド募集・サービス紹介
- 大丸松坂屋百貨店「明日見世」出品事例 THANKO
- 株式会社パルコ「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」に関する公式情報
- 株式会社丸井グループ リアル店舗への出店サービス「OMEMIE」
- 株式会社丸井グループ D2Cブランドなどへのリアル店舗・運営支援
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