MARKET NOTE 004
POPUPの市場ではなく、「使い方」に余白がある
認知・販売・顧客理解・オンラインをつなぐ年間マーケティング
企業が商品やブランドを知ってもらうための手段は、数多くあります。
SNS広告、動画広告、インフルエンサー、駅のデジタルサイネージ、イベント出展、オウンドメディア。
それぞれに強みがあり、商品や目的によって使い分ける必要があります。
ただ、多くの広告は、商品やブランドを「見てもらう」ことに費用を使います。
広告が表示された。
動画が再生された。
Webサイトがクリックされた。
そうした数字を測定することはできますが、広告を見た人が商品を実際に手に取り、どのような反応を示したのかまでは分からないことがあります。
その点で、POPUPは少し変わった性質を持つ媒体です。
商品を見てもらう。
実物に触れてもらう。
説明を聞いてもらう。
その場で購入してもらう。
さらに、顧客の反応を確認し、オンラインでの次の接点にもつなげられる。
POPUPは単なる期間限定の売場ではなく、広告、販売、顧客理解、オンライン送客を一つにできるマーケティングの場でもあります。

広告は、見てもらうために費用を使う
大阪の主要駅でブランドを大きく露出しようとすれば、相応の予算が必要です。
駅のデジタルサイネージには、複数の広告が順番に表示される小型のプランもあります。
一方で、主要コンコースの多数の画面を一社で使うような大規模広告では、媒体費だけで一週間数百万円になる場合があります。
映像やグラフィックの企画、撮影、デザイン、広告代理店への費用などを含めれば、企画全体がさらに大きな金額になることもあります。
もちろん、大規模な交通広告には、一度に多くの人へブランドを見せられる強さがあります。
新商品の発売や企業の知名度向上など、短期間に大きな認知を取る目的では有効です。
ただし、基本的には「見てもらう」ための施策です。
広告を見た人が、商品に触れたのか。
商品の違いを理解したのか。
価格をどう感じたのか。
購入を迷った理由は何だったのか。
そこまでを広告だけで把握することは簡単ではありません。
SNS広告は安く始められる。ただし、表示されたことと売れたことは違う
SNS広告は、大規模な交通広告と比べて少額から始められます。
地域、年代、興味関心などを設定し、どれくらい表示されたか、何人がクリックしたかも確認できます。
小さな会社やオンラインブランドにとって、使いやすい広告手段であることは間違いありません。
一方で、私たちは日常的に多くのオンライン広告を目にしています。
そのすべてを詳しく見るわけではありません。
広告だと分かった瞬間に読み飛ばしたり、動画をスキップしたりすることもあります。
広告が表示されたことと、商品に興味を持ったことは同じではありません。
クリックされたことと、商品が購入されたことも同じではありません。
SNS広告では、表示回数やクリック単価だけを見ると、成果が出ているように見える場合があります。
しかし、企業が本当に確認すべきなのは、
広告から何人の新しい顧客が生まれたのか。
売上や利益につながったのか。
一度購入した人が、再び購入したのか。
広告費を使った結果、顧客との関係が残ったのか。
ということです。
SNS広告には、効果の高い使い方もあります。
一度Webサイトを訪れた人や、商品を知っている人への再広告。
見た瞬間に魅力が伝わる商品。
商品との相性が良い発信者による紹介。
POPUPで商品を見た人への再接触。
つまり、SNS広告を単独で考えるのではなく、すでに生まれた興味を次の行動へ進める手段として使うことで、効果が高まる可能性があります。
POPUPは、見せながら売ることができる
POPUPにも費用はかかります。
施設利用料、販売員の人件費、搬入・搬出費、什器、決済手数料、交通費などが必要です。
出店場所や運営方法によって差はありますが、商品原価を除いた出店関連費用が、売上の一定割合を占めることになります。
ここで重要なのは、その費用を広告費と同じように使いながら、同時に商品を販売できることです。
一般的な広告は、認知を取るために費用を支払います。
POPUPは認知を取りながら、その場で売上もつくれます。
売上が計画どおりに上がれば、出店や認知獲得に使った費用の一部、場合によっては大部分を、その場の販売によって回収できる可能性があります。
もちろん、必ず回収できるわけではありません。
場所と商品の相性が悪ければ、売上は伸びません。
商品の見せ方、価格、接客、在庫構成が合っていなければ、期待した成果は出ません。
それでも、広告として費用を使うだけでなく、販売による回収の可能性を持っている点は、POPUPの大きな特徴です。
言い換えるなら、POPUPは、
「販売機能を持った広告媒体」
として考えることができます。
一度の出店だけで、ブランドは覚えてもらえるのか
初めて見る商品を、その場ですぐに購入する人ばかりではありません。
少し気になったが、その日は通り過ぎた。
商品名は覚えていないが、パッケージには見覚えがある。
別の場所でもう一度見かけて、「前にも見た商品だ」と思い出した。
さらに別の機会に見たことで、初めて立ち止まった。
人は、同じ商品やブランドへ繰り返し接することで、少しずつ親しみや安心感を持ちやすくなります。
心理学では、このような傾向を単純接触効果と呼びます。
ただし、何度も見せれば自動的に売れるという意味ではありません。
悪い印象を与えれば、その印象が重なることもあります。
同じ見せ方ばかり続ければ、飽きられる可能性もあります。
大切なのは、単に出店回数を増やすことではありません。
場所や季節、商品構成、見せ方を変えながら、良い接点を積み重ねることです。
一度目は、存在を知ってもらう。
二度目は、「前にも見た」と思い出してもらう。
三度目は、商品を詳しく見てもらう。
そして必要なタイミングで、購入してもらう。
一度の出店だけで終わらせるのは、そこで生まれた認知や興味を、そのまま途切れさせることにもなります。

大阪、京都、神戸で接点を広げる
関西には、それぞれ性格の異なる大きな商業エリアがあります。
大阪駅・梅田駅周辺。
なんば駅周辺。
天王寺駅周辺。
京都駅や四条河原町周辺。
三宮駅周辺。
同じ関西でも、訪れる人、移動の目的、買い物に使える時間、売れやすい商品は異なります。
年間を通じて複数の地域へ出店すれば、単に認知を広げるだけでなく、地域ごとの反応を比較できます。
大阪では、どの商品が売れたのか。
京都では、どのような説明に反応があったのか。
神戸では、価格やパッケージがどのように受け取られたのか。
オンラインストアの販売データだけでは、「なぜ売れたのか」「なぜ選ばれなかったのか」が分からないことがあります。
POPUPでは、売上と顧客の反応を同時に確認できます。
その結果を次の出店へ反映すれば、出店を重ねるたびに精度を高めることができます。
春夏秋冬ではなく、商品に合う時期を選ぶ
年間出店といっても、春夏秋冬に均等に出店する必要はありません。
商品によって売れやすい時期は違います。
食品の場合、夏場は持ち運びや品質管理が難しくなる商品があります。
暑さによって客足や購買行動が変わり、常温での販売に向かない商品もあります。
一方で、冷菓、飲料、夏向け商品には好機となります。
春、秋、冬の年3回が合う商品もあれば、春と秋冬の年2回から始めた方がよい商品もあります。
新商品発売の時期に合わせる。
ギフト需要が高まる季節を選ぶ。
オンラインストアの販売が伸びる時期に、リアルな接点を追加する。
重要なのは、決められた回数をこなすことではありません。
商品、地域、顧客、季節の組み合わせを検証しながら、年間計画をつくることです。

POPUPは、小さなテストマーケティングの場でもある
POPUPでは、売上以外にも多くの情報を得られます。
どの年代が立ち止まったか。
どの商品が最初に手に取られたか。
どの価格で迷われたか。
商品名や用途が一目で伝わったか。
どの説明をしたときに購入へ進んだか。
試食や試用が効果を持ったか。
オンラインで人気の商品が、実物の売場でも選ばれたか。
こうした反応は、商品開発、パッケージ、価格、Webサイト、SNSでの伝え方を改善する材料になります。
一週間の出店で得た情報を、次の一週間へつなげる。
地域を変え、季節を変え、見せ方を変えながら確かめる。
POPUPを年間で行う意味は、単に出店回数を増やすことではなく、顧客から学ぶ回数を増やすことでもあります。
二次元コードで、その場の接点をオンラインへつなぐ
POPUPに来た人が、その場で商品を購入するとは限りません。
荷物になるため、後でオンラインから買いたい人もいます。
商品には興味を持ったが、すぐには必要でない人もいます。
別の商品や新商品を、後から見たい人もいます。
そのとき、二次元コードから、
オンラインストア。
SNS。
ブランドサイト。
オウンドメディア。
LINE公式アカウント。
会員登録。
などへ案内することで、POPUP終了後も接点を続けられます。
POPUPで商品を知る。
実物を見て、触れる。
二次元コードからオンラインストアを見る。
SNSで新商品や次回の出店を知る。
後日オンラインで購入する。
次のPOPUPで再び商品を見る。
リアルとオンラインを別々に運用するのではなく、一つの流れとしてつなげることで、POPUPの価値は出店期間だけに限定されなくなります。

POPUPの市場は、すでに盛り上がっている
現在、駅や地下街、商業施設では、多くのPOPUPが開催されています。
特にスイーツや食品は、POPUPの代表的なカテゴリーとして定着しています。
見た瞬間に商品が分かりやすい。
手土産や自宅用など、用途を想像しやすい。
価格を確認し、短時間で購入を決めやすい。
試食によって商品の魅力を伝えられる。
スイーツがPOPUPと相性の良い商品であることは間違いありません。
つまり、POPUPという市場そのものが空いているわけではありません。
すでに多くの出店者がいて、売場も盛り上がっています。
まだ余白があるのは、POPUPの使い方
一方で、メーカーやオンラインブランドが、POPUPを年間のマーケティング計画に組み込み、
複数地域で認知を広げる。
商品を販売する。
顧客の反応を集める。
地域ごとの違いを比較する。
二次元コードからSNSやオンラインストアへつなぐ。
得られた情報を、商品や広告の改善へ反映する。
という形で一体運用する方法は、まだ十分に広がっているとはいえません。
常設店を持たないオンラインブランド。
消費者と直接話す機会が少ないメーカー。
地域外へ販路を広げたい事業者。
SNSでは知られているが、実物を見せる場所がないブランド。
こうした企業にとって、POPUPは単なる臨時販売の場所ではありません。
大規模な広告や常設店舗と比べて、初期投資や固定費を抑えながら、主要な商業地で顧客との接点をつくれる可能性があります。
POPUPそのものは、新しい販売方法ではありません。
市場が空いているわけでもありません。
まだ余白があるのは、その使い方です。
一度出店して、売上だけを見て終わる。
そこから一歩進み、認知、販売、顧客理解、オンライン接続を一つの計画にする。
POPUPを単発の販売イベントから、年間のマーケティングへ変える。
そこに、メーカーやオンラインブランドにとっての、新しい市場の余白があるのではないでしょうか。
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