MARKET NOTE
なぜ人通りが多いのに売れないのか
ポップアップの売上を“売場との相性”と“通行人が買うまでの流れ”で考える
ポップアップストアでは、人通りの多い場所に出店しても、必ずしも売上につながるとは限りません。
駅ナカや商業施設では、多くの人が通っています。しかし、その人たちは必ずしも買い物を目的に歩いているわけではありません。移動中の人、乗り換え中の人、待ち合わせに向かう人、仕事の合間に通る人。売場の前を通る理由はさまざまです。
そのため、ポップアップの売上を見るときは「人通りが多いか」だけでは不十分です。見るべきなのは、その売場と商品の相性、そして通行人が購入に至るまでの途中の流れです。
従来の購買行動モデルについて
マーケティングでは、AIDMA、AISAS、SIPSなどの購買行動モデルがよく使われます。
AIDMAは、Attention、Interest、Desire、Memory、Action。認知して、興味を持ち、欲しいと感じ、記憶し、行動する流れです。
AISASは、Attention、Interest、Search、Action、Share。認知して、興味を持ち、検索し、購入し、共有する流れです。
これらのモデルは、消費者の心理変化や、情報接触から購入までの流れを整理するうえで有用です。広告、EC、SNS、ブランド認知の設計では、今でも重要な考え方です。
ただし、ポップアップには少し当てはめにくい
ポップアップでは、多くの場合、目の前を通る人は「買い物客」というより「通行人」です。
特に駅ナカや通路型の売場では、移動中、乗り換え中、急いでいる人も多くいます。認知して興味を持ち、検索して購入するという流れ以前に、現場ではもっと手前の段階が発生しています。
- そもそも気づいてもらえたのか
- 目を向けてもらえたのか
- 足を止めてもらえたのか
- 接客や説明まで到達できたのか
ここを分解しないと、売上が伸びなかった理由を正しく見つけにくくなります。売上だけを見ても、POPが弱かったのか、導線が合っていなかったのか、接客機会が足りなかったのか、そもそも場所が合っていなかったのかが分かりません。

さらに前提として「売場との相性」がある
ポップアップで売上が伸びないとき、すぐに商品、POP、接客の問題と考えがちです。しかし、その前に見るべきことがあります。
それは、その売場と商品は合っているのか、という点です。
同じ人通りの多い場所でも、駅ナカ、百貨店、商業施設、観光地、オフィス街では、通っている人の属性や購買モードが違います。
駅ナカ通路は移動中の人が多く、衝動買いよりも、予約受取や手軽な購入に向いている場合があります。百貨店催事は、比較検討、試食、ギフト需要と相性が良いことがあります。観光地では、土産、限定感、その場で買う理由が重要になります。
つまり、KPIを改善しても成果が出ない場合、そもそも売場選定が合っていない可能性があります。この記事では、難しい言葉を使わず、この前提を「売場との相性」と呼びます。
次に「通行人が買うまでの流れ」を見る
売場との相性がある程度合っているなら、次に見るべきは、通行人が購入に至るまでの流れです。
ここでは、ポップアップの現場を次のように分けて考えます。
英語で整理する場合は、Traffic、Attention、Look、Stop、Engage、Salesです。
- Traffic:売場前を通る人の数
- Attention:売場や商品に気づく
- Look:商品やPOPを見る、興味を持つ
- Stop:足を止める、近づく
- Engage:接客、説明、試食、質問対応などで理解する
- Sales:購入する
KPIとして見るべきポイント
この流れに沿うと、各段階で見るべきKPIを設定できます。
- Traffic:通行量、前面通過人数
- Attention:視認率、気づき率
- Look:注視率、興味喚起率
- Stop:立ち止まり率、立ち寄り率
- Engage:接客率、説明到達率、試食率、QR読み取り率、LINE登録率
- Sales:購入率、客単価、売上、接客後購入率
売上だけを見ると、何が悪かったのか分かりません。しかし、この流れで分解すると、気づかれていないのか、見られているが立ち止まらないのか、立ち止まるが接客まで進まないのか、接客しても購入されないのかが見えやすくなります。

ロンドンの近い事例:Lone Design Club
海外では、ポップアップを単なる短期販売の場ではなく、ブランドの認知獲得、顧客接点づくり、テスト販売、データ取得の場として活用する動きがあります。
参考になる近い事例が、ロンドン発のLone Design Clubです。公開情報では、独立系ブランドやDTCブランドに向けて、ポップアップストアやマルチブランド型の売場、リアル店舗でのブランド体験の機会を提供していると紹介されています。
Vogue Businessの記事では、Lone Design Clubが高い通行量のある立地、ブランド編集、イベントや体験、QRによるオンライン接続、フットフォールや売上・反応データの取得を組み合わせていることが紹介されています。

この考え方は、今回整理している「売場との相性」と「通行人が買うまでの流れ」に近いものです。
ポップアップは、売れたか売れなかったかだけでなく、どんな人が立ち寄り、何に反応し、どこで離脱したのかを見ることで、次の出店や販促改善につなげられます。
まとめ
ポップアップの売上は、人通りだけでは決まりません。まず、その売場に商品のターゲットがいるのか、つまり「売場との相性」を見る必要があります。
そのうえで、通行人が「気づく」「見る」「立ち止まる」「接客・理解する」「購入する」という流れのどこで離脱しているかを確認します。
従来の購買行動モデルは有用です。ただし、ポップアップの現場では、より手前の行動を分解することが重要になります。
ポップアップは、短期販売の場であると同時に、売場・商品・顧客反応を検証するための小さな実験場でもあります。
参考リンク
- Vogue Business - Inside Lone Design Club
Lone Design Clubが独立系ブランド向けにポップアップやマルチブランド型売場を展開し、フットフォール、QR、イベント、売上・反応データなどを活用していることを紹介している記事。
- Lone Design Club
ロンドン発の独立系ブランド向けコミュニティ/小売プラットフォーム。記事では公開情報をもとに、参考になる近い事例として紹介しています。
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