MARKET NOTE 003
同じ商品でも、場所が変われば売れ方が変わる
気づく、見る、立ち止まる。場所で変わるPOPUPの購買行動
人通りが多いのに売れない売場がある一方で、通行量はそれほど多く見えなくても、安定して商品が動く売場があります。
前回の記事では、POPUPの現場を、
「通行人」「気づく」「見る」「立ち止まる」「接客・理解」「購入」
という流れに分けて考えました。
売上だけを見るのではなく、通行人が購入に至るまでのどこで止まっているのかを見ることで、売場の課題を整理しやすくなります。
では、この流れは、どの売場でも同じように進むのでしょうか。
同じ商品を、同じ価格、同じ売り方で販売したとしても、場所が変われば売れ方は変わります。
人の数が違うからだけではありません。
その場所を訪れている人の目的、歩く速さ、周囲への注意、使える時間、買い物に対する気分が違うからです。
POPUPの売場を考えるときに重要なのは、単に「人が多い場所」を探すことではありません。
その商品が、気づかれ、見られ、立ち止まってもらい、理解され、購入されるまでの流れを進みやすい場所かどうかを考える必要があります。
人流は重要。ただし、人流だけでは分からない
POPUPにとって、人流は重要です。
人が通らない場所では、商品に気づいてもらう機会も生まれません。多くの人が行き交う場所には、それだけ多くの接点があります。
ただし、人流として数えられる人が、そのまま購入客になるわけではありません。
同じ100人が売場の前を通ったとしても、その100人の状態によって、結果は大きく変わります。
仕事や学校へ向かって、足早に通り過ぎる100人。
周囲の店舗を見ながら、ゆっくり歩いている100人。
食事や買い物を目的に訪れている100人。
定期的に入れ替わるPOPUPを楽しみにしている100人。
人数は同じでも、商品に気づいた後の行動は同じではありません。
人流とは、購入者数ではなく、気づいてもらえる可能性の母数です。
大切なのは、その母数の中に、商品を見たり、立ち止まったり、購入を検討したりする余地のある人が、どれくらいいるかということです。
地下街にも、さまざまな目的の人がいる
売場を考えるとき、「駅ナカは通勤客」「百貨店は買い物客」「地下街は通過客」といった分類が使われることがあります。
大きな傾向をつかむうえでは分かりやすい考え方です。
しかし、実際の売場は、それほど単純には分かれていません。
たとえば地下街には、通勤や乗り換えで通過する人がいます。
一方で、地下街そのものへ買い物に来る人、飲食店を探している人、待ち合わせまでの時間を過ごしている人、雨や暑さを避けながら回遊している人もいます。
定期的にPOPUPが開催されている場所では、売場の入れ替わりを楽しみにしている人もいます。
「この場所には、期間限定の商品や新しい店が出ている」
そう認識されている売場では、通行人の中に、最初から周囲の商品を探しながら歩く人が生まれます。
その人は、単なる通過客ではありません。
新しい商品との出会いを期待している買い物客でもあります。
見るべきなのは、駅ナカ、地下街、百貨店といった施設の名称だけではありません。
その売場に、どのような人の行動が根づいているか。
POPUPを見る習慣があるのか。
立ち止まることに違和感がない場所なのか。
その違いによって、「気づく」から先の進み方は変わります。

商品によって、価値が伝わるまでの時間が違う
売場との相性を考えるうえで、もう一つ重要なのが、商品の価値が伝わるまでに必要な時間です。
商品によって、購入までに必要な説明や体験は異なります。
見た瞬間に内容が分かり、短時間で購入を判断できる商品があります。
一方で、作られた背景や素材、使い方、一般的な商品との違いを知ることで、初めて価値が伝わる商品もあります。
一瞬で魅力が伝わりやすい商品
POPUPの売場では、スイーツや食品を多く見かけます。
これは、単に人気があるからだけではありません。
商品を見た瞬間に内容が分かりやすく、味や用途を想像しやすいことも理由の一つです。
自宅用なのか、差し入れなのか、手土産なのか。
季節限定なのか、その場所でしか買えないのか。
パッケージや陳列から魅力を伝えやすく、その場で価格を確認し、短時間で購入を決めやすい特徴があります。
試食によって、さらに短い時間で商品の良さを伝えることもできます。
こうした商品は、「気づく」「見る」「立ち止まる」という流れを短時間で進みやすい商品だといえます。
説明を聞くことで価値が伝わる商品
地方の物産や、メーカーが開発した新商品、素材や製法に特徴がある商品は、見ただけでは違いが伝わりにくいことがあります。
どこで作られているのか。
どのような素材が使われているのか。
一般的な商品と何が違うのか。
どのような場面で使うものなのか。
なぜこの価格なのか。
こうした情報を知ることで、商品の見え方は変わります。
このような商品では、多くの人に一瞬だけ見てもらうことよりも、一定数の人に立ち止まってもらい、説明や体験まで進んでもらうことが重要になります。
つまり、「Traffic」や「Attention」だけでなく、「Stop」から「Engage」へ進みやすい売場が必要です。
実物を見ることが最後の一押しになる商品
オンラインストアやSNSを中心に成長しているブランドでは、POPUPへ来る前から商品を知っている人もいます。
写真や動画を見たことがある。
ブランド名を知っている。
買おうか迷ったことがある。
しかし、オンラインだけでは、色、サイズ、重さ、質感、香り、使い心地などを完全に確認することはできません。
そこで実物を見ることが、購入を決める最後の一押しになります。
衣料品なら試着する。
雑貨なら手に取る。
食品なら試食する。
化粧品なら香りや使用感を確かめる。
オンラインで形成された興味が、リアルな売場での体験を経て、購入につながります。
この場合のPOPUPは、ゼロから商品を認知してもらう場所というより、オンラインで生まれた関心を、実物によって確信に変える場所になります。

場所によって、進みにくくなる段階が違う
前回の記事では、POPUPの購買行動を次のように整理しました。
Traffic
売場の前を人が通る
Attention
売場や商品に気づく
Look
商品やPOPを見る
Stop
足を止める、売場へ近づく
Engage
接客、説明、試食、試用などを通じて理解する
Sales
購入する
場所が変わると、この流れの中で進みにくくなる段階も変わります。
たとえば、人流は非常に多いものの、歩く速度が速い場所があります。
この場合、Trafficは多くても、LookやStopまで進む人は限られます。
売場の存在や、何を販売しているのかを短時間で伝えられなければ、説明や接客まで進むことはできません。
反対に、人流はそれほど多くなくても、定期的にPOPUPが開かれ、利用者が売場を見る習慣を持っている場所があります。
この場合、Trafficは中程度でも、Attention、Look、Stopへ進む割合が高い可能性があります。
人流だけで比較すると小さく見える場所でも、購入までの流れ全体で見ると、商品に合っていることがあります。
また、売場へ立ち寄る人は多いものの、接客や商品理解から購入へ進みにくい場合もあります。
このときは、すぐに「場所が悪かった」と判断するべきではありません。
商品の違いが伝わっていない。
価格の理由に納得してもらえていない。
商品数が多すぎて選べない。
試食や試用の方法が分かりにくい。
接客のタイミングが合っていない。
このように、売場ではなく、商品構成や伝え方に改善の余地がある可能性もあります。

「売場との相性」を、売れなかった理由にしない
POPUPで期待した成果が出なかったとき、「この場所とは相性が悪かった」と結論づけることがあります。
しかし、相性という言葉だけで終わらせると、次の改善につながりません。
想定していた客層が少なかったのか。
商品に気づかれていなかったのか。
見られていたが、立ち止まる理由がなかったのか。
立ち止まったものの、商品の違いが伝わらなかったのか。
商品は理解されたが、価格や容量が合わなかったのか。
場所は合っていたものの、持ち込んだ商品構成が合っていなかったのか。
原因は一つとは限りません。
売場との相性とは、売れなかったときの言い訳ではなく、購入までのどの段階が進みにくかったのかを考えるための視点です。
どこで流れが止まったのかが分かれば、次の出店では、売場を変えるべきなのか、商品を変えるべきなのか、見せ方や説明を変えるべきなのかを考えられます。
POPUPでは、買わなかった人にも意味がある
POPUPの成果は、その場の売上だけでは測れません。
商品を初めて知った。
実物を見た。
試食や試用をした。
ブランド名を覚えた。
QRコードからオンラインストアを見た。
後日、SNSで商品を見つけた。
次に売場を通ったときに購入した。
その場では購入しなくても、POPUPをきっかけに、商品やブランドとの接点が生まれることがあります。
特に、まだ広く知られていない商品や、オンラインを中心に販売しているブランドにとって、実物を見てもらえること自体が大きな意味を持ちます。
広告では写真や動画で商品を見せることはできます。
しかし、実物の大きさ、質感、香り、味、使い心地まで伝えることはできません。
POPUPは、商品を販売する場所であると同時に、実物を使ってブランドを知ってもらう場所でもあります。
その場で売上をつくりながら、認知を広げる。
顧客の反応を見ながら、オンラインでの伝え方を改善する。
販売と広告、体験と調査が一つの場所で起きることが、POPUPの特徴です。

スイーツが多い売場にも、次の余白がある
現在のPOPUP売場では、スイーツや食品が多く展開されています。
見た目で魅力が伝わりやすく、用途が分かりやすく、短時間で購入を決めやすい。
スイーツがPOPUPと相性の良い商品であることは間違いありません。
一方で、同じような商品や企画が続けば、利用者にとって新鮮さが薄れていく可能性もあります。
売場を運営する側にとっても、支持されている定番カテゴリーを大切にしながら、新しい出店者や商品を探すことは、売場の魅力を保つうえで重要です。
地域性のある商品。
これまで消費者と直接接する機会が少なかったメーカーの商品。
オンラインストアで支持を集めているブランド。
SNSでは知られているものの、常設店を持っていない商品。
新しい使い方や生活スタイルを提案する商品。
これまでPOPUPを販売方法として考えていなかった企業にも、可能性はあります。
ただし、どの商品でも、人の多い売場へ持っていけば売れるわけではありません。
商品の価値が伝わるまでに、どれくらいの時間が必要なのか。
説明が必要なのか、体験が必要なのか、実物を見るだけで十分なのか。
その条件と、売場での人の行動が重なる場所を考える必要があります。
まとめ
POPUPにとって、人流は重要です。
人が多い場所には、それだけ多くの商品接点があります。
しかし、人流だけで売上が決まるわけではありません。
商品によって、気づいてから購入するまでに必要な時間、情報、説明、体験は異なります。
また、同じ駅ナカ、地下街、百貨店でも、人が訪れる目的や歩き方、POPUPへの認知は売場ごとに違います。
大切なのは、「どこが一番人の多い場所か」だけを考えることではありません。
この商品は、どこなら気づいてもらいやすいのか。
どこなら足を止めてもらえるのか。
どこなら価値を理解してもらえるのか。
どこなら購入への次の行動へ進みやすいのか。
商品と売場の相性は、施設の名前だけでは決まりません。
商品が価値を伝えるために必要な時間と、売場で人が使える時間。
その二つが重なる場所を見つけることが、POPUPの売場選びでは重要になります。